第1章 結論
新品の競泳水着に見える白い粉や白い擦れ跡は、多くの場合、不良ではなく素材特性に由来する一時的な現象です。とくに布帛系(ナイロン×ポリウレタン)の高密度生地は、黒板のようにサラサラとしたマットな表面感をもっています。この表面に、超極細のポリウレタン原糸から生じた極小の粉が生産や折り畳みの過程で付着すると、線状や点状の白さとしてはっきり視認されます。着用や洗濯を重ねることで次第に落ち着きますので、まずは落ち着いて初回のお手入れを行っていただくのが安心ですね。

第2章 現象の正体と素材特性(布帛系とニット系の違い)
白く見える正体は、ポリウレタン原糸に由来する極微細な粉体や繊維屑が表面に移って見えていることが中心です。布帛系の競泳用生地は、経糸と緯糸を高密度に織り込んだ構造で、表面が非常にフラットかつ均一な反射特性を示します。黒板に粉が乗ると一気に目立つのと同じ理屈で、微量の白色物質が付着しただけでもコントラストが強まり、線状や点状の白さがはっきりと見えてしまいます。濃色無地やマット仕上げのモデルほど光の拡散が少ないため、白さが浮きやすく感じられますね。
一般的なニット系(ポリエステル×ポリウレタン)は編み構造由来の微細な凹凸と陰影をもち、同量の粉が乗っても輪郭が表面テクスチャに紛れて目立ちにくい傾向があります。現象そのものはどちらの素材でも起こり得ますが、見え方の差はこの表面仕上げと反射特性の違いに起因します。さらに布帛系は糸と糸が交差する織りの特性上、局所的な擦過で粉が線状に転写されやすく、畳み皺のラインに沿って白い筋が出やすい傾向があります。ここで重要なのは、目に見えることが「劣化そのもの」ではなく、「可視化されやすい表面だから目立つ」という理解です。品質や機能に直結する欠陥ではなく、視覚的な初期現象として整理されます。
第3章 なぜ発生するのか(工程・摩擦・静電気)
発生は主に三つのタイミングで説明できます。まず生産・仕上げ工程では、生地がミシン台や検反台、仕上げ台の上を繰り返し滑走します。このとき微弱な摩擦が連続的に生じ、極小の繊維屑が表面に移ることがあります。裁断端や縫合部の近傍は糸の切断や整形が行われる場所で、粉体の発生源に近いため付着の確率が高まりやすいですね。次に折り畳み・梱包・輸送の過程では、圧力が面ではなく線や点でかかりやすく、畳み癖のラインや袋の角、箱の端などで白さが線状・点状に現れます。輸送中は温湿度が変化しますので、乾燥条件では静電気が発生しやすく、帯電した粉が一時的に表面へ保持されやすくなります。最後に開封直後の環境要因ですが、冬場や空調の強い室内は相対湿度が低く、帯電が増えます。袋から出した瞬間に前より白く見えるのは、粉が帯電して視覚的に乗って見えるからです。いずれも生地内部で劣化が進行しているサインではなく、使用や一度の手洗いで見え方が穏やかになる物理的な現象ですね。

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